2.北野天満宮のお牛さん

26/29
前へ
/191ページ
次へ
「ほんなら、早速、明日、もう一度、天神さんに行こか」 「颯手、明日は仕事じゃないのか?」  誉が心配そうに言ったが、 「一日ぐらい臨時休業でも構わへん。僕にも顛末を見届けさせて」 颯手は微笑んだ後、愛莉に視線を向けた。 「今日はかんにん、愛莉さん。この箱の持つ力に気づかなくて、つらい思いさせてしもて。僕は愛莉さんのナイト失格やね」 「何を言うんですか、颯手さん!私、いつも颯手さんに助けられてます!私のナイトだなんて……颯手さんにそんな風に言ってもらえるほど、私、立派な人間じゃありませんよ。気にしないで下さい」  慌てて首を振る愛莉を見て、颯手は少し寂しそうな顔をした。ふと誉を見ると、難しい顔をして、颯手の横顔を見つめている。 (颯手……誉?)  わたしは従兄たちに気づかれないよう、そっと彼らの顔を見つめた。この3人は、時々、微妙な雰囲気になる。 (もしかして、颯手……愛莉のこと……)  心の中に浮かんだその先の言葉を、はっきりと考えたくなくて、私は唇を噛んだ。 (愛莉は、誉の恋人だよ……?)  愛莉は颯手の想いに気が付いているのだろうか?  もし気が付いているのだとしたら、この3人の関係は、今後、どうなっていくのだろう。 (颯手、愛莉よりわたしを見てよ。わたしが一番に颯手の隣に居たいの)  わたしは心の中で颯手に呼びかけ、彼の横顔を見つめた。   *
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1106人が本棚に入れています
本棚に追加