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翌日、わたしと、颯手、誉、愛莉の4人は、颯手の車で北野天満宮に向かっていた。
『天神市』の終わった北野天満宮は、昨日とは打って変わって静かで、落ち着いた雰囲気を漂わせている。
颯手は神社の駐車場に車を停めると、外に出た。続いて、助手席の誉、後部座席のわたしと愛莉も外に出る。
まずは本殿にご挨拶に行ってから、わたしたちは『一願成就のお牛さん』を目指した。
「おじいさんに会えると思う?」
「そうやなぁ。毎日来はるってことやけど、何時ぐらいなんやろ。会えるとええんやけど。お牛さんが教えてくれはったら、一番ええんやけどなぁ」
颯手の言う通り、何時か分からなければいつまでも待つことになるし、すれ違いも起こりそうだ。
「お牛さん、今日も出て来てくれないかな」
皺くちゃな老人の顔を思い出し、わたしは期待を込めてつぶやいた。
絵馬掛所に辿り着くと、わたしたちは鳥居の外で、箱の持ち主が来るのを待った。オルゴールを持った誉の側に寄り添っている愛莉は、まだ少し元気がないように見える。
なかなか現れないので、暇つぶしに周りの摂社を見て回っていると、本殿の裏手からこちらに向かって歩いてくる老齢の男性の姿が目に入った。四角い顔に白髪交じりの太い眉に見覚えがあり、昨日、わたしが絵馬を掛けた時、「受かるといいね」と言ってくれたおじいさんだと分かった。
「もしかして、あの人が……?」
思わず声に出すと、
「そうじゃ」
急に隣から声が聞こえて、わたしは吃驚して仰け反った。
「お牛さん!」
「箱を見つけてくれたのじゃな」
「はい。それで、今日はあの人に返しに来たんです」
「それは重畳」
お牛さんはそう言って「ふぉっふぉっふぉっ」と笑う。
わたしは、
「お牛さんありがとう!」
とお礼を言うと、急いでお牛さん本体の方へ駆け戻った。
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