2.北野天満宮のお牛さん

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「これでお牛さんからのお願い事は解決やね。帰ろか」  わたしの頭に軽く触れた後、颯手は体ごと振り返り、 「愛莉さん、大丈夫?」 誉の側でつらそうにしている愛莉に近づいた。 「はい。大丈夫……です」  弱々しく笑う愛莉を守る様に、誉が肩を抱いて引き寄せる。  歩き出した3人を追いかけようとして、わたしはふと気配を感じ、後ろを振り向いた。牛舎の側に『一願成就のお牛さん』の化身が立っていて、こちらを見ている。 「約束通り、おぬしの願いを公に進言しておこうかの」  「ひとつだけじゃよ」と言って、皺くちゃの顔の中の唇のあたりに人差し指をあてたお牛さんに、 「それなら、わたし、絵馬の方じゃなく、お牛さんに直接頼んだ方を……」 わたしは急いで呼びかけたが、その時にはもうお牛さんの姿は消えていた。 「…………」  誰もいなくなった牛舎を見つめて立ち尽くしていると、 「杏奈!」 少し離れた場所から、颯手がわたしを呼ぶ声が聞こえた。わたしは、 「はーい!」 と返事をして、颯手の元へと駆けて行った。
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