3.地主神社の恋占いの石

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「地主神社かぁ……」  試験が午前中で終わったので、午後からいつものように『Cafe Path』にやって来たわたしは、フレンチトーストを口に運びながら、実穂に聞いた話を思い返していた。 (『恋占いの石』やってみたい。それに縁結びのお守りも欲しいな……)  でも、ひとりで行くには勇気が出ないし、かといって、当の颯手に連れて行って貰うわけにもいかない。 「誰か一緒に行ってくれる人……」  何気なくつぶやいた時、店内で接客をしている愛莉の姿が目に入った。 (そうだ!愛莉に連れて行って貰おう!)  女同士だったら恥ずかしくないし、恋占いもきっと盛り上がるに違いない。わたしは、 「愛莉、愛莉!」 と小声で彼女を呼んだ。 「ん?」  愛莉はわたしの呼びかけに気が付くと、 「どうしたの?杏奈ちゃん」 と言って近づいて来た。 「愛莉にお願いがあるの。一緒に行って欲しいところがあるの」 「一緒に行って欲しいところ?」  愛莉が小首を傾げたので、 「地主神社っていうところ」 と伝える。 「地主神社?東山の?」 「うん」 「確かあそこは縁結びの神様のはず……」  愛莉が記憶を思い出すよう唇に指をあてた後、 「ああ!そうか」 とぽんと手を打った。  そして「ふふっ」と楽しそうに笑うと、 「いいよ」 と頷く。 「いつにする?」  愛莉に問い掛けられたので、 「土日は愛莉はお仕事なのよね。平日だったら、試験休みに入ったら行けそう」 と行って、日にちを教えると、 「分かった。じゃあ、その日に一緒に行こうね」 愛莉は「約束」というように小指を出した。  愛莉と指切りげんまんをしながら、 「あのね、颯手には内緒にしておいてね」 小さな声でお願いすると、愛莉は心得ているとでも言うように、にっこり笑って頷いた。   *
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