3.地主神社の恋占いの石

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 八坂神社の本殿にお参りをした後、わたしたちは境内を抜けて、円山(まるやま)公園に入った。公園と呼ばれているが、池泉回遊式の日本庭園でもあり、園内には多数の桜の木が植えられていて、春になるとお花見客で賑わう京都の花見スポットだ。  円山公園も抜け、少し歩くと、豊臣秀吉の妻ねねが、秀吉の死後、夫の菩提を弔うために建てたという高台寺(こうだいじ)が見えて来た。それを横目に通り過ぎ、再び少し歩くと、町家の立ち並ぶ京都らしい風情の坂道に入った。 「『二寧坂(二年坂)』だよ。ここでこけたら、『二年以内に死ぬ』って言われているから、気を付けてね」  愛莉が真面目な顔でそう言ったので、 「それ本当?」 目を丸くして聞くと、 「石段や坂道が多いから、ケガをしないよう気を付けてねっていう……警句なんだって」 愛莉は真に受けたわたしが面白かったのか、ふふっと笑った。  町家は土産物屋になっているところも多く、時々中に入っては、 「このかんざし可愛い!」 「杏奈ちゃんに似合いそうな色だね」 「でも、多分、わたしのくせ毛に差しても、映えないと思う」 「そんなことないよ。アップにして刺したらきっと可愛いよ」 お喋りをしながら、気ままに店内を見て回る。
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