3.地主神社の恋占いの石

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 二寧坂から、産寧坂(三年坂)を抜け、清水坂に入ると、ひときわ観光客が増え、人の流れに乗って坂を上ると、目の前に清水寺の正門が見えて来た。 「せっかく来たから、清水の舞台にも上がって行こう?」  立派な狛犬の間を通り抜け、門をくぐり、階段を上がると、右手に朱色の三重塔があった。その横を通り過ぎると券売所があり、愛莉がわたしの分の拝観券も買ってくれる。 「はい、杏奈ちゃん」  渡された拝観券には、紅葉の中の清水の舞台が描かれていた。綺麗だなと思って眺めていると、 「これ、四季によって絵柄が変わるんだよ。春は桜で、冬は雪。思わず集めたくなるよね」 何度も清水寺に来たことがあるのか、愛莉が豆知識を披露した。  拝観券を見せて本堂の中に入り、まずはご本尊の千手観音菩薩に手を合わせる。ご本尊は秘仏で非公開のため、目の前にいらっしゃるのは前立仏といわれる、ご本尊の姿を模した観音様だった。  お参りが終わると、わたしと愛莉は、本堂から張り出した有名な清水の舞台に出た。  ここは文字通り「舞台」で、法要などで、舞楽、芸能などを奉納する場所らしい。傾斜面に建っており、一番長い柱は12メートルあるのだそうだ。  舞台の端に寄り、わたしは、 「わあっ!」 と声を上げた。遠くに、京都市内の風景が一望できる。ここからでも、京都駅前の京都タワーが見えた。  今度は舞台から下を覗き込んでみると、 「高ーい……」 さすが「清水の舞台から飛び降りる」という言葉だけある、と思った。  わたしが考えていることを読んだかのように、愛莉が、 「『清水の舞台から飛び降りる』なんて言葉があるけど、江戸時代には、本当に飛び降りた人が大勢いたみたいだよ。でも意外と死ななかったんだって。とはいえ、死んじゃった人もたくさんいたみたいだから、飛び降りない方がいいよね」 と言った。
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