1.大豊神社の狛鳶

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 関西国際空港から空港バスに乗り、京都駅に着くと、わたしたちはタクシーで、これから新しく生活を始めるマンションに向かった。  パパが日本での生活のために購入したマンションは、京阪電車「出町柳駅」に近い場所にあり、鴨川という京都を縦断する大きな川に面して建っていた。銀閣寺も徒歩圏内なので、従兄たちの家にも近い場所だ。  新居に着くと、パパはわたしを一番に家の中に入れて、 「どうかな?杏奈がここを気に入るといいんだけど」 と言った。  玄関で靴を脱ぎ、わくわくした気持ちで室内に入る。  玄関を入ってすぐのところに洋室があり、覗いてみると、シングルベッドと勉強机が置かれていた。ピンクの花柄のカーテンが可愛い。どうやらここがわたしの部屋になるようだ。  廊下を奥に進むと広いリビングがあり、大きな窓から鴨川の風景が見え、わたしは「わあ!」と歓声を上げた。 「風景が綺麗ね。パパ」  笑顔で振り返ると、わたしがこの家を気に入ったことが分かったのか、パパがにっこりと笑った。  引っ越し前に、仕事の都合と合わせて何度か日本を訪れていたパパが、あれこれと準備を進めてくれていたので、家具はほとんど揃っている。リビングのソファーに腰掛けると、わたしは、 「ウィンドをケージから出してもいい?」 とパパに尋ねた。わたしの隣に腰を下ろしたパパが、 「いいよ」 と言ってくれたので、キャリーケースからミニチュアダックスフントのウィンドを室内に出す。ウィンドは黒い毛並みで、手足は茶色の靴下を履いたような色をしている。室内に出て来ると、嬉しそうに尻尾を振って、わたしの膝の上に飛び乗って来た。
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