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「帰りはどうしようかな。八坂まで戻るか、五条から京阪電車で帰るか……」
人でごった返す清水坂を下りながら、帰りのルートを考えている愛莉に、
「ねえ、愛莉」
わたしはふと聞いてみたくなって、声を掛けた。
「愛莉は、誉のことが好きなの?」
「えっ?」
唐突なわたしの問いかけに、愛莉が吃驚した表情を浮かべた。
「どうしたの急に?」
今更な気がするが、
「なんだか聞いてみたくなって」
真っすぐに愛莉を見つめると、愛莉は頬を染めて、
「……好きだよ。大好き」
と言って微笑んだ。
「そうか……そうよね。わたしも見てたらわかるもの」
愛莉の答えにどこかほっとしている自分がいることを感じながら、「うんうん」と頷いていると、
「じゃあ、杏奈ちゃんは颯手さんのことをいつから好きなの?」
愛莉に逆に問い返されてしまった。今度は自分の頬が熱くなり、
「ええと、それは……」
と口ごもる。
(相手は従兄で、ひとまわりも年が離れていて、わたしはまだ子供で、それなのに好きだなんて、きっと愛莉はわたしのことを変な子だと思っているんだろうな……)
そう考えながら恐る恐る愛莉に視線を向けると、愛莉は優しいまなざしでわたしを見ていた。
(……愛莉は、わたしの心にも寄り添ってくれるのね)
「あのね、わたし……7歳の時に日本を離れたでしょう?」
愛莉になら教えてもいいかもしれないと思い、わたしはぽつりぽつりと話し出した。
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