3.地主神社の恋占いの石

10/26
前へ
/191ページ
次へ
「帰りはどうしようかな。八坂まで戻るか、五条から京阪電車で帰るか……」  人でごった返す清水坂を下りながら、帰りのルートを考えている愛莉に、 「ねえ、愛莉」 わたしはふと聞いてみたくなって、声を掛けた。 「愛莉は、誉のことが好きなの?」 「えっ?」  唐突なわたしの問いかけに、愛莉が吃驚した表情を浮かべた。 「どうしたの急に?」  今更な気がするが、 「なんだか聞いてみたくなって」 真っすぐに愛莉を見つめると、愛莉は頬を染めて、 「……好きだよ。大好き」 と言って微笑んだ。 「そうか……そうよね。わたしも見てたらわかるもの」  愛莉の答えにどこかほっとしている自分がいることを感じながら、「うんうん」と頷いていると、 「じゃあ、杏奈ちゃんは颯手さんのことをいつから好きなの?」 愛莉に逆に問い返されてしまった。今度は自分の頬が熱くなり、 「ええと、それは……」 と口ごもる。 (相手は従兄で、ひとまわりも年が離れていて、わたしはまだ子供で、それなのに好きだなんて、きっと愛莉はわたしのことを変な子だと思っているんだろうな……)  そう考えながら恐る恐る愛莉に視線を向けると、愛莉は優しいまなざしでわたしを見ていた。 (……愛莉は、わたしの心にも寄り添ってくれるのね) 「あのね、わたし……7歳の時に日本を離れたでしょう?」  愛莉になら教えてもいいかもしれないと思い、わたしはぽつりぽつりと話し出した。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1112人が本棚に入れています
本棚に追加