3.地主神社の恋占いの石

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 実穂は、もう一度、わたしに顔を近づけると、 「なっちゃん以外は誰にも言っていないの。杏奈ちゃんがふたり目。横田君、モテるから、彼女が出来たって分かったらきっと噂になるから、なるべく内緒にしておくことに決めたんだ」 と、ひそひそ声で説明した。「なっちゃん」というのは実穂の幼馴染の佐伯夏巳(さえきなつみ)のことで、彼女は3年B組に在籍している。幼稚園からの知り合いだという夏巳とは親友の間柄らしく、実穂と夏巳とわたしの3人で何度か下校したことがある。 「なるほど……」  慎重な実穂の言葉を聞いて、わたしは「確かにあちこちで噂になると、いろいろと面倒だろう」と思った。 「だから、杏奈ちゃんも内緒にしててね?」  実穂に念を押され、「分かったわ」と頷く。 「じゃあ、今日は、横田君と一緒に帰るの?」 「うん、そう。だから、ごめんね。杏奈ちゃん」 「ううん、大丈夫よ。良かったね、実穂!」  実穂の体をぎゅっと抱いて囁くと、実穂もわたしの体をぎゅっと抱き返し、 「ありがとう、杏奈ちゃん!」 と小声でお礼を言った。 「ばいばい!」  明るく手を振り、教室を出て行った実穂を見て、 (いいなぁ……「彼女」かぁ) わたしは羨ましさで溜息をついた。 (わたしも「颯手の彼女です」って言ってみたい)  内心でつぶやいた後、 (でも、『恋占いの石』効果抜群じゃない!?わたしの恋も、期待が持てる!) 「今日も颯手のところに行こうっと!」 わたしはポジティブに考えると、足取りも軽く教室を出た。   *
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