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手紙の一件があってから、わたしは実穂の周囲を意識して観察するようになった。
実穂はどうやら、クラスの他の女子から無視をされているようだ。時折、
「オタクのくせに横田君と付き合ってて腹立つ」
「横田君、優しいから断り切れなかったんじゃないの?」
「迷惑がられてるの、気づいてないんじゃない?図々しい」
そんな悪口が聞こえてくる。
「実穂、お弁当、外で食べましょう」
昼休み。ひとりでぽつんと椅子に座っていた実穂を、わたしはお昼ご飯に誘った。すると、
「ごめん。最近、体調が悪くて、食欲がないんだ」
実穂から断りの言葉が返って来た。
「体調が悪いって……風邪?」
「風邪じゃないよ。最近、たまに、ちくちく刺されてるみたいに胸が痛くなるの。でも、病院に行ったらどこも悪くなかったから、私の気のせいかもしれない。大丈夫だよ」
首を振った実穂を見て、
(きっとストレスだろうな……)
わたしは気の毒に思った。
実穂は元々、人の悪口を言わない子だ。自分に悪意が向けられていても、それに対しての愚痴や悪口を、ひとつもこぼさない。
(もっと吐き出してもいいと思うけどな……)
「何か困ったことがあったら、いつでも言って」
溜め込むタイプは、限界を超えると、どうなるか分からない。わたしは心配になりながら、実穂を見つめた。
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