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お見舞いの当日、わたしは夏巳との待ち合わせ前に、『Cafe Path』に立ち寄った。実穂へのお見舞いの品に、颯手のケーキを持って行こうと思ったのだ。『Cafe Path』は普段はテイクアウトはしていないのだが、今日は特別に頼んである。
開店前にお店に行くと、颯手はケーキを箱に入れて、準備をしてくれていた。
「はい、杏奈。保冷剤は1時間分入れてあるで」
「ありがとう!」
箱の入った紙袋を受け取り、お礼を言う。
「颯手のケーキは美味しいから、食べてくれるといいな……」
「その、実穂ちゃん、やっけ?ずっと調子悪いん?」
颯手に聞かれて、
「少し前から。なんだか、刺されるみたいに胸が痛むんだって。でも原因不明で、お医者様も分からないみたい」
と答える。すると颯手は、
「原因不明で胸が刺されるように痛む……?」
とつぶやいて、考え込むように顎に手を当てた。
「……その子、最近、人に恨まれるようなこと、してはらへんかった?」
真剣な瞳で問いかけた颯手に、
「実穂は人から恨まれるようなことをする子じゃないわ!でも、モテる男子と付き合い始めてから、学校の女子にいじめられてる……」
と悲しい気持ちで答える。颯手は顎から手を外すと、
「もしかすると、その子、呪いを掛けられてるんかもしれへんなぁ」
と言った。
「呪い!?」
不穏な言葉を聞いて、わたしは思わず大きな声を上げた。
「そうや。言葉には言霊が宿る。ただの悪口でも呪いになることがあるんやで。――杏奈、呪いを返す方法、知ってる?」
颯手に聞かれて、首を振る。
「それなら、教えといてあげるし、もし、そうかもしれへん、って思ったら、やってみるとええわ」
「どうしたら判断できるの?」
小首を傾げて問いかけると、
「『胸が痛い』って言わはったら、その子の体に触れてみ。ピリッとして、何か嫌な感じがしたら、多分呪いや。杏奈なら分かると思うで」
と言われ、わたしはこくりと頷いた。
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