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夏巳と待ち合わせをしたのは、北野天満宮から少し歩いた場所にある「北野白梅町」のバス停だった。
わたしがバスから降りると、夏巳はもう来ていて、わたしを待ってくれていた。
「こんにちは、佐伯さん」
「星乃さん、こんにちは」
相変わらず距離がある感じで挨拶を交わすと、
「実穂の家はこっちだよ」
夏巳の先導で歩き出す。
夏巳は表通りから一筋入ると、住宅街の間を歩いて行く。途中で赤い屋根の家の前を通った時、
「ここが私の家なんだ」
と言って指を差した。
「そして実穂の家は、こっち」
夏巳と実穂の家は本当に近く、次の通りを曲がったところにあった。
わたしは、これだけ近い場所に住んでる同い年の女の子同士なら、仲が良くなるのは当たり前だな、と思った。
夏巳が実穂の家のチャイムを押すと、母親が出て来て、
「まあ、夏巳ちゃん。今日も実穂のお見舞いに来てくれたの?……あら、そちらの子は、学校のお友達?」
わたしと夏巳の顔を交互に見ると、笑顔を浮かべた。
「実穂ちゃんと同じクラスの星乃です」
「みっちゃんの具合、どうですか?」
夏巳が尋ねると、
「昨日の夜は、やっぱり胸が痛いって言っていたけど、今朝は調子がいいみたい。……本当に、原因は何なのかしらね」
母親は心配そうに頬に手を当てた。
「とりあえず、上がって。実穂、起きてるみたいだから」
母親に勧められたので、わたしと夏巳は「お邪魔します」と口々に言うと、玄関で靴を脱いだ。
「上っておいてね。後でお茶を持って行くわね」
夏巳は実穂の部屋がどこか分かるようだ。母親に頷くと、勝手を知っているように階段を上っていく。わたしは母親に会釈をすると、夏巳の後を追った。
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