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「MIHO」と書かれた可愛いプレートのかかった部屋の前に行くと、夏巳は軽く扉をノックした。
「みっちゃん、お見舞いに来たよ」
夏巳が声を掛けると、
「なっちゃん?」
中から扉が開き、パジャマ姿の実穂が顔を出した。
「今日も来てくれたの?」
弱々しく微笑んだ後、
「あっ、杏奈ちゃん」
わたしの姿を見つけて目を丸くした。
「杏奈ちゃんも来てくれたんだ」
「実穂、具合はどう?」
「うん、今日は調子がいいの。どうぞ、入って」
実穂に促され、わたしと夏巳は彼女の部屋に入った。部屋の中はカーテンもベッドカバーもピンク色で統一され、チェストの上に並べられたぬいぐるみが、女の子らしい部屋の雰囲気を醸し出している。
「はい、クッション」
実穂がハート型のクッションをふたつ出してくれたので、わたしと夏巳はそれぞれ腰を下ろした。
ベッドに腰掛けた実穂に、
「これ、お見舞い。ケーキなの。良かったら食べて」
と言って、颯手のケーキが入った紙袋を渡すと、
「わあ!ありがとう!ごめんね、気を遣わせて」
実穂はお礼を言った後、少し申し訳なさそうな顔をした。
紙袋をテーブルの上に置いた実穂に、
「食事は出来てるの?」
と尋ねると、
「ちょっとだけ。……ふふっ、病気ってダイエットにいいのかもね。体重減ったよ」
「バカ!そんなダイエット、良くないわ」
実穂が自虐的なことを言ったので、わたしは目を尖らせて叱った。
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