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「みっちゃん、いつから学校に来れそうなの?」
「どうだろう……。病気のこともあるけど、なんだか、学校が怖くなっちゃって」
夏巳の問いかけに、実穂は俯くと、つらそうな表情を浮かべる。わたしは、やはり、女子から無視されたり悪口を言われたりすることが、実穂を苛んでいるのだと思った。
「……横田君は、何て言ってるの?」
夏巳が遠慮がちに実穂の彼氏のことを尋ねると、実穂は顔をあげて、
「横田君、毎日メッセージ送ってくれるの。『大丈夫?』って。昨日はお見舞いに来てくれたんだ」
頬を染めると、嬉しそうな顔をした。色々あっても、彼氏とは仲良くしていることが分かり、わたしは少しホッとした。
「横田君、優しいわね」
「うん」
わたしの言葉に、実穂は幸せそうな笑顔を浮かべている。
すると、夏巳がふいに立ち上がり、
「ごめん、みっちゃん。星乃さん。私、今日、用事があること忘れてた」
と堅い表情で言った。
「えっ?」
わたしが驚いて目を瞬くと、夏巳は、
「もう帰るね」
と言って、バッグを手に取り、実穂の部屋を出て行こうとする。
「ごめんね。今日、習い事がある日だった」
ドアノブに手を掛けた夏巳に、実穂が慌てて、
「なっちゃん、忙しいのに来てくれてありがとう……!」
と声を掛ける。
夏巳はこちらに背を向けたまま軽く頷くと、振り返らずに部屋を出て行ってしまった。
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