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わたしは、
「ママの誕生日ももうすぐよね。わたしもママにプレゼントを買うわ。今年は何がいい?」
と問いかけた。ママとわたしは誕生日が近く、いつも一緒にお祝いをしている。実は、亡くなったおばあちゃんも12月生まれで、一緒に住んでいた頃は、パパが大きなケーキを買って来てくれて、皆でパーティーをしていた。
「うーん、そうねえ……」
ママは唇に指を当てて考え込むと、
「お守りがいいわ」
と言った。
「お守り?」
「そう。商売繁盛のお守り。伏見稲荷大社のがいいわね。京都一の商売繁盛の神様だから」
(ママ、ネットショップがうまくいっていないの、よっぽどショックなんだな……)
ママの希望を聞いて、わたしは内心で苦笑した。
「じゃあ、そうするね」
頷くと、ママは、
「どうせなら、颯手君と行って来なさいな」
と悪戯っぽい顔になった。
「私から颯手君に頼んでおくから、デートしていらっしゃい」
「デ、デート!?」
思わず声が裏返ってしまった。
動揺しているわたしを見て、面白そうに笑っているママは、
(一体、どこまでわたしの気持ちを知っているんだろう……)
と考える。
(深読みしすぎかな。ただ単に、わたしが子供の頃から颯手に懐いているから、こんなことを言うのかもしれない)
でも、ママの提案は素直に嬉しい。
「……うん、そうする」
わたしは熱くなった頬を隠すように顔を伏せながら、頷いた。
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