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大きな鳥居をくぐると、目の前に朱色の楼門が現れた。熱心に写真を撮っている外国人観光客を横目に見ながら、隣の手水舎に向かい、お清めをした後、あらためて楼門に向かう。
門の前には立派な狛狐の像があり、まるで「怪しいものは入れないぞ」とでも言うように、険しい顔でわたしたちを見下ろしていた。右側の狐は宝珠を、左側の狐は鍵を咥えている。
「なんだか、睨まれてるみたいで、ちょっと怖い」
階段を上がりながら、狐の間を通り抜ける時、そんな感想を漏らしたわたしを見て、颯手が、
「別に杏奈は何も悪いことしてへんやん」
と笑った。
「そうだけど、何となく」
足早に狛狐から離れ、楼門をくぐり境内に入ると、目の前に外拝殿が建っており、その奥が本殿になっていた。外拝殿を回り込み、本殿への階段を上ると、やはりここにも狛狐がいる。
「狐だらけ」
「狐は伏見稲荷大社の神使やからね」
「なんで狐なの?」
素朴な疑問を抱いて尋ねると、
「伏見稲荷大社を創建したのは渡来人の秦氏やと言われてるんやけど、秦伊侶巨(はたのいろこ)ていうお人が、お餅を的にして矢を射らはった時、お餅が白鳥になって飛んで行って、その場所に『伊祢奈利生ひき』――つまり、稲が生えて来たんやって。その稲が生えた山の場所を、イナリと呼ぶようになって、社の名にしはった。
ほんで、その稲荷神が、後に、穀物の神様、宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)と同じものと考えられるようになって、今の伏見稲荷大社の主祭神にならはった。
で、肝心の狐やけど、狐が神使と言われている理由はいくつかあって、尻尾が稲穂に似てるからとか、稲を食べるネズミを狐が食べるから、なんて言われてるね」
颯手が神社の起源から詳しく説明をしてくれた。
「稲荷大神は、さっきも話した宇迦之御魂大神、佐田彦大神(さたひこのおおかみ)、大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)、田中大神(たなかのおおかみ)、四大神(しのおおかみ)の5柱のことを言うねん。本殿に、仲良く5柱並んでお祀りされたはるんよ」
本殿の前に立ち、お賽銭を入れて鈴を鳴らす。二拝二拍手した後、
(ママのネットショップがうまくいきますように)
とお願い事をしてから一拝をする。
そして授与所に向かい、目的の商売繁盛のお守りを手に入れ、とりあえず今日のミッションは達成した。
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