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再会
「誠一が帰ってくるとよ」
彼の母がわたしに伝えにきたのは、28歳最後の日だった。
どくん。心臓が高鳴る。
覚えてた。本当に覚えてたんだ――。
「借金も完済したとよ。ほんとにねえ、長かったねえ」
「連絡があったんですか!? いつ!?」
勢いこんでたずねると、彼女は潮で傷んだ髪を撫でつけながら気まずそうに答えた。
「いつだったかな……あんまり急だったからばたばたして、月子ちゃんに伝えるのが遅くなって……」
その歯切れの悪い喋りかたと、わたしには直接報せてくれていない事実が、言いようのない不安をもたらした。
そして、約束の日はやってきた。
誠一は約束通り帰ってきた。
でも、ひとりではなかった。
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