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「和樹っ……?!」
椎名さんが最後の切り札と言ったものが
すぐにも奪われそうで僕は思わずソファーから転げ落ちる。
「何?どうしたの……?」
「いや、なんでも……」
「まさか君、本当に鈴蘭の毒を食べた後遺症じゃないだろうね?」
「そんな、まさか」
「それじゃ何の真似?」
「何のって……」
「僕のキスを拒む理由は?」
助け起こされ
牡鹿のような瞳に穴の開くほど見つめられると。
「征司くんが言った事への答え?」
「え……」
「僕とこの家を出る可能性はないってこと?」
不意打ちだ——。
「や、いや……そうじゃなくて!」
「じゃあ僕と出て行く?」
もう一度ソファーから落ちかける僕の腰を支えて
追い打ちをかけるように九条さんは尋ねた。
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