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僕が何度だって恋に落ちるように。
九条敬もまた何度だって僕の瞳に恋に落ちる。
「じゃあ僕行くね」
そのまま素直に行かせてくれる――はずだった。
「九条さん……?」
「そう言って次は彼の部屋に行くの?」
だけど後ろ手を引かれ振り向いた僕をなんと
「っ……!」
あの九条敬が床に押し倒し組み敷いたのだ。
「あっ……や……!」
予想外だった。
「頼むから僕に抵抗しないでくれよ」
だから油断していたし
「九条さん……だめっ……!」
「これ以上したら悪い子の僕を嫌いになるか?」
完全な返り討ち。
「——ならないよな?」
耳元に囁く
独占欲に満ちた妖しい声音は
「ンッ……」
すぐに耳たぶを甘噛みする本能的な吐息に変わった。
痺れるほど床に押さえつけられた手首。
「——ならないだろ?」
「……なりません」
僕は易々とその手に堕ちた。
彼は無言で僕を抱き上げると我が物顔でベッドに運んだ。
「駆け引きは後だ。分かったね?」
「アアッ……!」
初っ端から——大誤算だった。
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