38人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
九条さんとの半ば強引な情事の後。
彼は僕を抱いたまま眠ってしまった。
「よいしょ……っと……」
王子様を起こさないように
僕は身体を枕と入れ替えベッドをそっと抜け出す。
「虫も殺さないような顔して……」
天宮家に来た影響か。
この人にもだいぶ根付いてきた。
ハングリー精神みたいなもの——。
「ごめんね」
あたりに散らかった服を適当に身に着けながら
怖いくらい無垢で美しい寝顔に詫びる。
夢の中で懺悔しているかもしれない。
僕と交わらなければ経験しなくてもよかったすえた眠りだ。
だけど悪夢はまだまだ終わらないだろう。
「おやすみ、僕の良心」
鈴蘭の毒を吸収してしまった僕は
善悪や愛憎の境目を越えて
止まらず進んでいくからさ――。
最初のコメントを投稿しよう!