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「もうお出かけかと思いました」
とりあえずご機嫌伺いだ。
腰を低くして頭を下げる。
「いるさ。自分の家だ――図々しい居候とはわけが違う」
苦虫噛み潰したように歯軋りしながら
征司は堂々と階段の真ん中を下りてきて言った。
かくなる上は――。
「家でパーティーを開かれると聞きました。お兄様が恥ずかしい思いをなさらないようしっかり努めさせていただきますね」
先手を打って僕がここにいる理由を教えてやる。
上目遣いに『引き留めたのはあなたですよ』と――無言で訴えてやるんだ。
すると征司はすれ違いざま
腹立たし気に僕に肩をぶつけて言った。
「パーティーが終わるまでせいぜい楽しんでおけ。昨夜みたいにな」
心臓がドクンと跳ねる。
昨夜九条さんの部屋で何があったか――。
「あれはっ……」
「何も言わなくていい」
既に気づかれてたんだ。
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