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部屋の内線電話が鳴った。
それで――。
「あ……」
ひとつ大事なことを忘れていたことに気づく。
「もしもし」
「ひどいな。今の今まで僕の事忘れていたって声だ!」
受話器を上げると即答えた。
僕のせいで警察に連行されていった可哀相なナイトだ。
「まさか!まさかだよ。あなたの心配ばかりしていたさ」
「ほぅ。それはそれは」
分からないはずないのに。
でもこれが社交辞令ってもんさ。
「それで?大丈夫でした?」
「ああ。満くんが機転を利かせて迎えに来てくれたよ。アホで間抜けな当主の誤解だったとね」
思わず互いに吹き出した。
「あーあ。僕、満くんと結婚しようかな」
「ええ、ええ。従兄弟同士なら結婚できますよ」
「ところで笑っている場合なの?」
僕は受話器越しに肩をすくめる。
笑っている場合かって?
「まあ。殺されそうになった次は追い出されそうだけどなんとか」
僕は含み笑いで言った。
「これから手を打つところです」
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