episode259 復讐の計画①

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「何?」 「本当さ。俺が見てる前でひいひい泣いてたんだ」 「おまえが……見てる前でだと?!」 「ああ。ひどいもんだった」 ほら、実にタイミング良く完全な誤解を生んだ。 征司の顔にみるみる赤みが差す。 しかし薫はいまや正しいことを全うしたという顔つきで。 「許してやれよ――もともとダメな弟だろ」 そんな征司の肩をポンと叩き 僕らを残して去ってゆく。 「誤解です」 次の瞬間。 銃殺される直前の人間みたいに強張って 僕は自然と両手を上げていた。 征司は静かに長く息を吐いた。 『てっきり俺の部屋に来るもんだと思ってた』——って。 僕の耳にはそう聞こえた。 もちろん王様は何も言わなかったけれど。 「征司お兄様……」 銃口はこちらに向けられてはいなかった。 その代わり。 美しい背中がこちらを向いて 征司は無言のまま僕から離れてゆく。 それだけで。 僕はいつもうちひしがれるような気分になる。 吐き気さえしてくる。 「分かってやってんだろ……」 その時。 立ち尽くす僕の耳に届いたのは 「あら、いやだ。こういうのは私の趣味じゃないって言ったでしょう?私とにかく毒々しいのは嫌いなのよ。欲しいのはね清廉で愛らしいものだけ」
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