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約束の夜8時――。
めかしこんで門の前で黒いセダンが来るのを待った。
時間通りだ。
僕は両手を開いて車の前に飛び出した。
急ブレーキ。
フロントガラス越しにハンドルを握りしめた冴木刑事と目が合う。
「なにやってんだよ!危ないな!」
声は届かないけれど
口の動きでそれぐらいは読み取れた。
何をやっているかって?
忘れられない再会のシーンにインパクトを与えてやったのさ。
「待ってたのになかなか来ないからだよ」
助手席のドアに手をかけるとすでにロックは外れていた。
「時間通りだろ。今君の家に行こうと……」
助手席に乗り込んだ僕を見やると
冴木尊はコクリと喉を鳴らして言葉を飲み込んだ。
それもそのはず——。
現役刑事がとても着ないようなセクシーなスーツを
素肌にまとった僕の姿態に視線は釘付けになる。
「屋敷で会うのはちょっと——問題があるんじゃないかと思って。違う?」
「ただの事情聴取だ。問題なんてないよ」
目は座ったままのクセに
あくまでとぼけるつもり——。
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