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「それで薫お兄様にお願いがあるんですよ」
「よせよ」
薫は大仰に両手を上げる。
まるで僕が銃でも構えてるみたいにさ。
「そんなに警戒しないで。僕はただ征司お兄様をちょっと説得して欲しいだけ」
「あぁ?」
「女王様に復讐する前に追い出されそうなの」
なんで?と言いかけて薫は言葉を飲み込む。
理由なんて聞く必要もないと思ったんだろう。
「俺を巻き込むな」
「薫お兄様だって昔鈴蘭で殺されかけた仲間じゃないですか?悪い魔女に一泡吹かせてやりたくないの?」
「それとこれとは話が別だ——そもそも俺がお願いして征司兄が聞くもんかよ」
そっぽむいて乾きかけの髪を掻き上げる。
白いうなじに鳶色の巻き毛が黄金のように零れ
思わずこちらが息をのんだ。
やれやれ。
この人は自分の美しさをこれっぽっちも武器にしないんだから。
「僕ぐらいの可愛げがあれば征司お兄様だって耳を貸すさ」
「ざけんな、出てけ」
ほらね。
可愛い巻き毛も
雪のように白い肌も実に宝の持ち腐れだ。
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