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「それじゃたった一言——僕が泣いていたと言って下さいよ」
長居する気はないけれど――。
僕は手近にあった椅子を手繰り寄せ
足を組んで腰を下ろす。
「そういのって他の人から聞く方が効果があるから」
「はあ……?!」
「それに薫お兄様なら人の為に面倒な嘘なんかつかないし、根暗だから滅多に口も利かないもの信憑性がある」
「おまえな……!」
薫はたまりかねて地団駄踏むように僕の前に立つ。
「つーか、どこが泣いてるんだよ!」
言われれば
そのまま瞳を見つめて一筋二筋涙を流すのなんて簡単さ。
「ほら、泣いてるでしょ」
それに
「言うこと聞いてくれないと薫お兄様に泣かされたって言いふらすからね」
「なっ……!」
脅迫だってお手のもの——。
「それじゃよろしく、たくさん泣いていたと言って」
わざとらしく涙を拭うと僕は席を立った。
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