海岸あるある

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海岸あるある

 冬休みに、はじめて訪れた親戚のおうち。住んでいるのは大人ばかりで、ヒマを持て余した双子の小学1年生たっくんやっくんは、家を抜け出して探険ごっこを始めた。 「ややっ、隊長。あそこに何やら人だかりがしております。土着の者たちでありましょうか?!」 「うむ、そうかもしれぬ。言葉が通じるかはわからんが、行ってみよう」  そこは海岸だ。砂浜から長く伸びた橋の上に、若いお姉さんやお兄さんたちがたくさんいた。  たっくん隊長はお姉さんの1人に話しかけた。 「あのー、ここで何かあるんですか?」 「え?」  すると、横にいたお兄さんが言った。 「ここでは、なにもないよ。強いて言えば、刹那的な夜が見つかるくらいかな」 「せつな?」  たっくん隊長に、やっくん隊員が耳打ちした。 「現地の言葉と思われます」  漏れ聞こえたその言葉に、先のお兄さんお姉さんが笑った。 「現地の言葉! 確かにね!」  なぜウケたのだろう。たっくんやっくんは、首を傾げて、顔を見合わせた。やっくん隊員が提案した。 「我々は勉強が足らないようです。ここはいったん退却いたしましょう」 「うむ、そうしよう」  二人が退却した後、さっきのお兄さんお姉さんが連れ立って橋をあとにした。  この橋は、別名ナンパ橋と呼ばれている。
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