第四章 始まりの人

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 いつも、そっと遠くから生徒たちを見守ってくれているような。 『私はただ流されているだけの人間です』  校長はそう言うが、自分たちを見ている彼の瞳とその言葉を照らし合わせると。  彼が優しいから、いつもそういう結果に終わってしまうのではないかと推測できた。  なんで、そういう人を問い詰めなきゃいけないのかな。  100%放っておきたい気持ちに包まれる。  だけど、なんだか、このままでは校長自身が可哀想な気がしたのだ。  人の気配も、霊の気配もしない校舎を、生きたまま彷徨う彼の孤独な夜が、このまま延々と続くことが――。  暗い校舎の中からひとり満月を見上げる校長の幻が見えた。  ちらと槻田を見る。  そして、叔父を思い、隆彦を思った。  彼らはいつも、こんな思いをしているのだろうか。  事件の犯人に迫るとき、そこにあるのは謎を解いた爽快感だけではないだろう。  春に起こった事件を思い、夏に起こった事件を思った。
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