528人が本棚に入れています
本棚に追加
いつも、そっと遠くから生徒たちを見守ってくれているような。
『私はただ流されているだけの人間です』
校長はそう言うが、自分たちを見ている彼の瞳とその言葉を照らし合わせると。
彼が優しいから、いつもそういう結果に終わってしまうのではないかと推測できた。
なんで、そういう人を問い詰めなきゃいけないのかな。
100%放っておきたい気持ちに包まれる。
だけど、なんだか、このままでは校長自身が可哀想な気がしたのだ。
人の気配も、霊の気配もしない校舎を、生きたまま彷徨う彼の孤独な夜が、このまま延々と続くことが――。
暗い校舎の中からひとり満月を見上げる校長の幻が見えた。
ちらと槻田を見る。
そして、叔父を思い、隆彦を思った。
彼らはいつも、こんな思いをしているのだろうか。
事件の犯人に迫るとき、そこにあるのは謎を解いた爽快感だけではないだろう。
春に起こった事件を思い、夏に起こった事件を思った。
最初のコメントを投稿しよう!