第四章 始まりの人

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「いや、此処でばったり逢うくらいだったんで、よく知らないですけど。  佐竹先生と居るのを何度か見ましたよ。  私と話したあとも、校舎の方に行くな、と思ったら、外に佐竹先生が居ました」  七月は少し考え、 「あの、沢木ひよりさんて」 と、更に問いかけたが、 「ああ、今、こっちの話をすべきじゃなかったですね」 と自分で話を遮った。  だが、校長は過去を思い出そうとしてくれる。 「そういえば、佐竹先生は、内緒でバイトしてましたよ。  私にバレましてね。  まあ、黙っててくれと言われるまでもなく、話す気もなかったですけど」 「バイト?」 「家庭教師のバイトです。  どうしてもと頼まれて、やってたようですよ。  一応、教師が個人的に引き受けることは禁じているんですけどね。  たぶんですが――。  沢木ひよりさんを教えてたんじゃないかと」 「沢木さんを?」 「いや実は、夕方、佐竹先生のアパートから出てくる沢木さんに遭遇したことがありましてね。  おや? と思って。  佐竹先生は、私に気づきました。  私は別に何を追及する気もなかったんですが、佐竹先生が自分からしゃべったんです。  沢木ひよりの家庭教師をしていると」
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