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「いや、此処でばったり逢うくらいだったんで、よく知らないですけど。
佐竹先生と居るのを何度か見ましたよ。
私と話したあとも、校舎の方に行くな、と思ったら、外に佐竹先生が居ました」
七月は少し考え、
「あの、沢木ひよりさんて」
と、更に問いかけたが、
「ああ、今、こっちの話をすべきじゃなかったですね」
と自分で話を遮った。
だが、校長は過去を思い出そうとしてくれる。
「そういえば、佐竹先生は、内緒でバイトしてましたよ。
私にバレましてね。
まあ、黙っててくれと言われるまでもなく、話す気もなかったですけど」
「バイト?」
「家庭教師のバイトです。
どうしてもと頼まれて、やってたようですよ。
一応、教師が個人的に引き受けることは禁じているんですけどね。
たぶんですが――。
沢木ひよりさんを教えてたんじゃないかと」
「沢木さんを?」
「いや実は、夕方、佐竹先生のアパートから出てくる沢木さんに遭遇したことがありましてね。
おや? と思って。
佐竹先生は、私に気づきました。
私は別に何を追及する気もなかったんですが、佐竹先生が自分からしゃべったんです。
沢木ひよりの家庭教師をしていると」
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