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「それは、沢木さんが、自分のアパートから出てきたことに対する言い訳じゃなくて?」
当時を思い出すような顔をしながら、校長は顎に手をやり、言った。
「……違いますねえ。
少なくとも、佐竹先生の方には、やましさは微塵もなかった。
沢木さんの方は私に気づかなかったので、反応は読みがたいですけど」
「校長がおっしゃるのなら、そうなんでしょうね」
と言うと、彼はちょっと気恥ずかしそうな顔をした。
「こういう仕事をしていると、人の顔色を読むのがうまくなってしまいましてね。
如何にも反省してそうな生徒が反省してなかったり。
喧嘩越しなのに、実はすごくこちらに対して、済まないと思ってたり。
そういう表情が、ちらちら見えるようになってくるんです。
でも――
自分のことに関しては、からきしなんですけどね」
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