第四章 始まりの人

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「それは、沢木さんが、自分のアパートから出てきたことに対する言い訳じゃなくて?」  当時を思い出すような顔をしながら、校長は顎に手をやり、言った。 「……違いますねえ。  少なくとも、佐竹先生の方には、やましさは微塵もなかった。  沢木さんの方は私に気づかなかったので、反応は読みがたいですけど」 「校長がおっしゃるのなら、そうなんでしょうね」 と言うと、彼はちょっと気恥ずかしそうな顔をした。 「こういう仕事をしていると、人の顔色を読むのがうまくなってしまいましてね。  如何にも反省してそうな生徒が反省してなかったり。  喧嘩越しなのに、実はすごくこちらに対して、済まないと思ってたり。  そういう表情が、ちらちら見えるようになってくるんです。  でも――  自分のことに関しては、からきしなんですけどね」
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