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男子はおどおどしだした。
情けない。
右へ左へ視線が泳ぐ。
「玲央菜って、知ってる?」
男子は首を横に振る。
「名字は、何て言うんですか?」
それは知らなかった。
和菓子屋の名、なんて言ったっけな。
思い出せない。
「少なくとも、玲央菜って名前は一年生で聞いたことないです」
「そっか」
それだけ言って、男子に背を向ける。
まだ確定したわけではないが、一年生ではないようだ。
階段を上がり、お次は二年生のフロア。
ここが一番足を踏み入れたくない場所だった。
あたしの学年だから。
あたし、どのクラスに振り分けられているんだろう。
もう来ることはないし、関係ないけれど。
そもそも、あたしのことを覚えているやつはいるのだろうか。
何故か気持ちが不安になる。
周りからどう思われていようが関係ないのに。
どんな視線を浴びようが、どうでもいいのに。
その筈、なのに。
嫌な気持ち。
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