3人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
しばらくそのままそこに立ち尽くしていた。
みたらし団子は食べたい。
でも、店員は呼ばない。
今日は、帰ろう。
そう思って踵を返した。
「おや、お客さんかな? ベルの音に気付かなくて、ごめんね」
あたしが振り替えると、カウンターに居たのは小さなお婆さん。
年は70歳くらい。
腰は曲がってよれよれだけれど笑顔が素敵、そんな人だった。
娘さんの笑顔は、お婆さん譲りなのか。
「いや……ベル押してないんだけど」
あたしは冷たく吐き捨てた。
こんな言い方するつもりじゃなかったのだけれど、自然とこうなってしまう。
人付き合いに慣れていないから。
「そうかい。……じゃあ、玲央菜のお友達かな?」
玲央菜。
お婆さんはそう言った。
女の子の名前は、玲央菜。
覚えた。
けれど、ここにはもう用事がないから、もう帰ろう。
「……違うよ。友達──」
「玲央菜は学校へ行っとるよ。君、学校は?」
次々に質問してくる。
学校?
見れば分かるじゃん。
行ってないんだよ。
あたしが不良だって、分かって言ってるのか。
それともわざとなのか。
でも依然として、お婆さんは笑顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!