繰返‐くりかえし‐

30/31

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
悪夢のせいで完全に目が覚めた。 もう一度寝ようとは思わない。 一つ深呼吸をして、ベッドから起き上がる。 なんだろう、このモヤモヤする感じ。 嫌な気持ち。 気持ちが沈んでゆく。 そうだ。 ちょっと外へ出て、気晴らしにでも行こう。 せっかくだから、和菓子屋にでも顔を出そうかな。 昼間の〝あの子〟は、いつもと変わらないのかな? あたしは手短に支度する。 さっと外へ出て、和菓子屋を目指した。 太陽は高く昇り、暖かい日差しが降り注ぐ。 久しぶりに日光を浴びた。 暖かい。 平日だから、警察に見つからないようにしないと。 ……別に、見つかってもいいか。 見つかっても、いつものように逃げる。 それだけだから。 少し歩いて、いつもの和菓子屋に到着。 運良く警察とはすれ違わなかった。 いつもここを巡回しているわけでもなし、こんな日もある。 いつも通りカウンターに店員の姿はない。 カウンター下のガラスケースには、美味しそうな和菓子が並ぶ。 やはり目を引くのはこれ、みたらし団子。 店員を呼ぼうとベルに手を伸ばしかけたその時、動きが止まった。 今は平日の昼過ぎではないか。 ベルを鳴らしたとしても、あの女の子は出てこない。 学校へ行っている時間か。 あたしは手を引っ込める。 別に良いじゃないか、店員があの子じゃなくったって。 別に良いのに。 それなのに、あたしはベルを押さなかった。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加