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しばらくそのままそこに立ち尽くしていた。
みたらし団子は食べたい。
でも、店員は呼ばない。
今日は、帰ろう。
そう思って踵を返した。
《タッタッタッタッタ……》
小走りする足音に気付いて、あたしは振り向く。
カウンターに出てきた子。
そこには、いつも見る女の子の姿があった。
学校へは、行っていないのか。
平日の昼間。
普通なら学校があるハズだけれど。
いつもみたいに、女の子はニッコリと笑う。
そうだ。
みたらし団子、買おう。
あたしは財布を取り出して、いつもみたいにお金をカウンターへ置いた。
女の子は手際よくみたらし団子を袋に入れて、手渡してくる。
「ありがとう」
あたしはハッとして、女の子に背を向けた。
いつもはこんなこと言わないのに、何故かそう感謝してしまった。
そして、そのままあたしは和菓子屋を足早に去る。
少し恥ずかしい。
今まで〝ありがとう〟なんて、誰にも言ったことないのに。
途中で足を止め振り向いてみる。
やはりいつもみたいに女の子が店を出てきて、頭を下げてきた。
「ふっ」
少し嬉しくて、あたしは初めて笑った。
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