玲央菜‐れおな‐

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「返してやるよ」 その言葉に顔を上げると、その子は本を振りかぶっていた。 気付いた頃には既に遅くて、投げられた本が私の顔に向かって飛んできていた。 「痛いっ……!!」 投げつけられた本が、私の頭を直撃する。 なんで、私なの。 どうして。 私がいつ、あなたたちに迷惑をかけたの? 一筋の涙が流れる。 こんな顔を誰にも見られないように、ずっと俯いていた。 「ちょっと可愛いからって、読書とか気取ってんじゃねーぞ」 そんなつもりはないのに。 しばらくすると担任が入ってきて出席をとる。 点呼をしていくのだが、いつも来ない不登校の人がいるんだ。 「なんだ、またあいつは休みか……」 名前は──安藤悠里(あんどうゆうり)。 そう、安藤悠里さん。 先生が何度も呼ぶものだから、覚えてしまった。 一度も見たことがない不登校の人。 きっと、さっきのギャルより怖い人。 絶対に関わってはいけない人。 私なんかとは、無縁な人。 そう考えていた時だった。 《ガラガラガラ……》 前のドアが開く。 それに皆注目する。 そして、初めて見る人が入ってきた。 少し癖毛のついた金髪。 さらりと靡くセミロングの髪。 そして、ちらりと見えるピアス。 「やっときたか安藤!」 「あ?」 担任を睨み付ける〝安藤悠里〟の姿が、そこにはあった。
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