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「……い、行くぞお前ら」
ギャルたちが足早に教室から去ってゆく。
私は助かった。
この安藤悠里という人に助けられた。
「あ、あの……」
直ぐ後ろにいる彼女を見上げる。
呼び掛けてもこちらを見向きもしない。
それだけなのに、怖かった。
口数が少なくて、無表情で。
一つ一つの言葉に重みを感じる。
「なに?」
私なんかに興味が無さそうな反応。
本当に私のことを助けようとしてくれたのかな。
「助けてくれて、ありがとうございます……」
刺激しないよう丁寧にそう言った。
尻餅を付いたまま頭を下げる。
「別にお前みたいなやつ、助けようとも思ってないけど」
「えっ……」
「ただあいつらに質問しただけだろ。結果的にお前は助かった訳だけど」
一度も目が合わない。
何となくだけれど、分かっていた。
この人は味方でも何でもない。
勘違いも甚だしい。
私が立ち上がったと同時に、彼女は背を向ける。
そして、何も言わずに歩き出した。
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