玲央菜‐れおな‐

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──── 「えっ……! なんで……!」 自宅に帰ってきた。 驚いたのは、自宅前の歩道に座って、みたらし団子を食べている彼女の姿があったから。 なんでいるの。 〝和菓子の匂いがする〟 そういえば、こんなことを言っていた。 帰宅した私に気付き、彼女は立ち上がる。 「遅いじゃん。何してたの?」 「……遅いじゃんて……。私、待っててなんて言ってないよ……」 いつもの私に戻っていた。 小さく消え入りそうな声。 「あぁ!?」 「ご、ごめんなさい……!!」 彼女はみたらし団子の串を近くのゴミ箱へ放り投げる。 何故私を待っていたのだろう。 和菓子の匂いがする── 和菓子が好きなの、かな。 「ここの和菓子屋、お前んちだったんだ」 彼女はポケットに手を突っ込み、和菓子屋を見上げる。 私の実家。 私の家だとは知らずに来たみたいだった。 「めちゃ上手いよな、ここのみたらし団子」 今まで見たことのない彼女の笑顔。 こんな顔をして笑うんだ。 いつもは無愛想で何を考えているのか分からない。 不良だとか、怖い人だとか思っていた。 でも、それは大きな間違いだったような気がする。 そんな顔を見て、ついつい笑顔が溢れた。
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