玲央菜‐れおな‐

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「やだ」 下を向いていると、そう返事が返ってきた。 なんだろう、この気持ち。 こんな気持ちになるのだったら、最初から言わない方が良かったって、そう思う。 制服の裾をギュッと握って、悲しさを必死に堪えた。 下唇を噛んで、涙をグッと堪える。 しかし、直ぐに溢れてくる。 でも、正面を向きたくはない。 だって、目の前には彼女がいるから。 私がじっとそうしていると、溜め息をついた彼女が口を開いた。 「帰ってくれたら嬉しいです、じゃなくてさ。……帰ろう、だろ」 顔を上げると、ニコッと笑う彼女の姿があった。 あっという間に嬉し涙に変わって、私は自然と微笑んでいた。 勇気。 私は初めて、勇気を出した。 こんなにも心が揺れている。 「……うん! 帰ろう、一緒に!」 「しゃーないなぁ」 本当はこんなにも優しい人。 口は悪いけれど、私の事をこんなにも気にかけてくれる。 それなら── もしも、本当にそうなら── 友達になってくれるのかな。
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