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──落ちない。
全然落ちない。
霞みもしない。
「なんで……! なんでよ! 落ちてよ……落ちて……落ちて──」
しかし、いくら擦ろうが一切状況が変わることはなかった。
私はただ、ひたすらに落書きを雑巾で擦り続けた。
──気付けばホームルーム5分前。
クラス中の人が私に注目する。
そんなことはお構いなしに、一心不乱で机を雑巾で擦る。
なんでよ。
おかしいよ、こんなの。
《ガラガラガラ……》
ドアが開き、誰かが教室に入ってくる。
既に皆席に着き、ホームルームを待っている。
その誰かは、私の前で立ち止まった。
「何やってんの?」
「あっ……」
彼女だった。
いつもみたいに無表情を貫いている。
そして、私は気付いた。
いつの間にか、泣いている。
涙で視界が乱れていたが、彼女の姿を捉えることは出来た。
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