玲央菜‐れおな‐

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──── その日は、教室に彼女の姿がなかった。 休み時間にあちらこちら探したが、見つけられない。 いつも通りギャルたちに虐められるのかと思いきや、そんなことは一切なかった。 寧ろ、視線すら感じないほど。 そう。 私は、虐められなくなった。 ──放課後。 私が席で読書をしていると、教室に彼女が戻ってきた。 なんだか眠そうな様子で背伸びをする。 「じゃあ行こうか。和菓子屋」 「う、うん……」 帰り道。 私は朝の出来事が頭から離れなかった。 あんなことをされて、なんとも思わないわけがない。 しかしこの彼女の様子を見ている限り、本当に気にしていないように思える。 「あ、あの……」 「ん?」 「机の落書き、なんとも思わないの……? 私は嫌だよ、あんなの……」 「あぁ。あのくっだねぇイタズラか。別に、気にしてないけど」 私が嫌だった。 初めて友達になれるかも知れない人が、あんなことをされて。 悔しくて、また泣きそうになる。 「お前が気にすることじゃねーだろ」 「うん……」
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