玲央菜‐れおな‐

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彼女と──悠里ちゃんと一緒にいたい。 これからも、ずっと。 「と、友達、だよ……! 私は、悠里ちゃんと、友達……!」 彼女は大きく反応すると、照れくさそうに頬を掻いた。 こんな表情をみるのも、初めて。 「なんだよ、〝ちゃん〟って。……あたしにとって、初めての友達だよ。お前が」 初めて。 私と同じだ。 初めての友達。 嬉しい。 これからも一緒に話して、お菓子を食べて── とにかく、とっても嬉しい。 「わ、私も……! 玲央菜って言うの、私……!」 少し興奮気味の私から、彼女が少し視線を反らす。 そのままボーッとして、ようやく口を開いた。 「……んじゃ、ご馳走さま。帰るわそろそろ」 彼女は唐突にそう言うと立ち上がり、鞄を肩の後ろで引っ掛けるようにしていつもみたいに持った。 名前、呼んでくれなかった。 でもいいんだ。 これでいい。 人生で大きな一歩を踏み出せた気がした。 玄関まで一緒に向かい、後ろ姿を見送った。 「じゃあな。……玲央菜」 こちらを見向きもせずに、そのまま彼女は歩いていった。 背中が見えなくなるまで、私は見送り続けた。 初めて名前を、呼んでもらえた。
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