玲央菜‐れおな‐

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逃げなきゃ……! 私は悠里ちゃんの手を、強く握った。 「……玲央菜。先に帰れ」 私の手が払われる。 ギャルたちを睨み付けるようにして、悠里ちゃんは席を立ち上がった。 「なんでよ……! 出来ないよ!!」 「行けよ!!!」 教室中に反響する大声。 なんで、一緒に逃げてくれないの? 殺されてしまうかもしれないのに。 逃げれば、済むことなのに。 私は、肩を強く押された。 「……和菓子屋で美味しいみたらし団子、作っといてな」 こんな状況なのに、悠里ちゃんは笑った。 考えることよりも先に、体が動く。 走って教室を飛び出た。 無我夢中で走って、校舎を駆け抜ける。 鞄なんてものは今の私には必要ない。 だから、教室に捨ててきた。 必死に走った。 走るのが辛くても、足を止めない。 苦しくて喉が痛くなっても、絶対に足を止めない。 運動音痴でおまけに体力がなくたって、今回は走るのを止めない。 解決させて、必ず私の事を迎えに来てくれる。 大切な約束だから──
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