玲央菜‐れおな‐

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「戻ってよっ! こんなの正しくない!! こんなの、正しい世界じゃない! 嫌だ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 私がいつもみたいに虐められる。 それでいいじゃない。 それで、全部解決する。 誰かを殺す。 そしてその罪や罰を背負うのも、私だけでいい。 私だけで充分。 全て、私が背負う。 痛みだって、苦しみだって、悲しみだって。 全部、背負ってやる。 そう心に誓った瞬間、周囲に異変を感じた。 何かおかしい。 ハッとして、辺りを見回す。 世界から、音が消えた。 それだけじゃない。 世界が、動きを止めていた。 私以外、呼吸をしない。 世界は灰色一色に変わって、何一つ、動かない。 通学中の生徒。 通勤中のサラリーマン。 お買い物へ出かけるお婆さん。 飛んでいる鳥だってそう。 見るもの全てが、まるで人形のように固まる。 ──スゥ── 背後から気配を感じる。 私は咄嗟に振り向いた。
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