玲央菜‐れおな‐

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何も迷う必要なんかなかった。 〝声〟を失うだけで、たった一人の友達が救えるのだから。 私のたった一人の、大切な友達。 たった一人だけ〝玲央菜〟と呼んでくれた人間。 もう私は〝悠里ちゃん〟と呼べないけれど、それでも、助けたい。 だからお願い。 私の願いを叶えて。 私は、少女の手を掴んだ。 すると、景色が白い(もや)で包まれてゆく。 次第に辺りは真っ白になり、私は目を閉じた。 『時間だよ。目を開くと、そこは第二の貴方の世界』 まるで夢を見ているかのような感覚。 心地良い気分。 私は暫く目を閉じていた。 目を開くともう、悠里ちゃんとは無縁の存在になる。 それでもいい。 大切なモノを守るためなら、私は犠牲になる。 たった一人の、友達だから。
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