玲央菜‐れおな‐

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その本を丁度真ん中で開いて、両手で掴む。 することは分かりきっていた。 だって、私は時間を飛び越えてきたのだから。 そして、悠里ちゃんの言葉を思い出す。 〝一回くらい、やり返してみろよ〟 「この本、真ん中から破れると思う人~!?」 リーダーがそう仲間に言い出すと、ケラケラ笑いながら周りのギャルが手を挙げる。 私は覚悟を決めた。 あの頃の私は何も出来なかった。 今でも弱いのは変わらない。 でも、ここで同じ繰り返しをしたら、悠里ちゃんに合わせる顔がない。 勇気をくれたんだ。 自分の大切な本は、自分で守る。 私は本を手にするギャルに体当たりした。 体を丸めて、思い切り腹へ向かって頭突きする。 「ってぇ……!!」 ギャルは顔を歪めて、本を床へ落とした。 私は素早く本を拾い上げ、胸の前で大切に抱き抱え走り出す。 これで悠里ちゃんと出会うことを回避できた。 こうすれば、悠里ちゃんとギャルたちが顔を合わせることもない。 これで、いいんだ。
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