追憶‐ついおく‐

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直ぐに書き終えた。 くるりと手帳の向きを変え、あたしはその文字を見る。 〝玲央菜〟 そう書かれていた。 あたしは馬鹿だから、読めない。 「ごめん、ひらがなで書いてくれる?」 女の子は笑顔で頷く。 可愛い顔。 清楚で、おしとやかで。 白い肌はつやつやしていて、優しい目をしている。 そんなことを考えているうちに書き終えたみたいで、先程のようにこちらへ手帳を開いた。 〝れおな〟 玲央菜。 れおな。 レオナ── 何故だろう。 この名前を、知っている。 知らないのに、知っている。 矛盾。 この子── あたしは顔を上げて、彼女の顔を確認した。
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