追憶‐ついおく‐

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拭っても拭っても、止まりはしない。 目が熱くなって、仕舞いには体が震えるほど号泣してしまった。 玲央菜が優しく背中を擦ってくれる。 何も口にしないで、無言のまま。 そんなこと、知ってる。 だって、玲央菜は── あたしはハンカチを目元から離す。 泣きじゃくった顔で、玲央菜を見つめた。 心配そうな表情は変わらないまま。 「玲央菜……」 玲央菜は驚いた表情のまま、固まる。 大きな目がさらに丸くなった。 そうだ。 玲央菜は。 玲央菜は── 「あだじの……はじめで、の──」 あたしが、最後に口にした言葉。 玲央菜は口元を押さえて、笑顔で泣いた。
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