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美智は定刻に出社した。体力が落ちたのか、駐車場から事務所までが遠く感じた。
部屋のドアを開けると室内の視線を浴びる。普段は一番に出社するので気恥ずかしい。周囲の社員に休んだことを詫びて席に着いた。
「みっちゃん、無理するんじゃないよ」
二宮に声をかけられた時には、会社に来てよかったと思った。仕事を手伝ってもらった礼を言うために希美の席に足を運んだ。
「希美さん、無理を言ってごめんなさいね」
「いえ、出来るだけのことはしましたが……」
「ありがとう。……ちょっと来てくれる」
美智はノートパソコンを手にして会議室に向かった。戸惑いを見せながらも、希美はついてきた。
会議室に入った美智は椅子に掛け、「パソコンなんだけど……」と、パソコンの電源を入れる。
「何でしょう?」
「ウイルスが入ったようなの。動きが悪くて、時々フリーズするし……。何とかならない?」
起動したパソコンを希美に向ける。
「ウイルスですか?……セキュリティーソフトで削除すればいいじゃないですか……」
希美の視線が美智とパソコンの間を泳いだ。
「セキュリティーソフトでは削除できないようなの。希美さんなら、対策を知っているんじゃないかと思って」
瞳を見つめると、希美は視線を逸らした。
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