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「山猫組は、10年ほど前に解散した」
久保田がドスの利いた声で言った。彼も投げられたらしく背中が汚れている。
「足を洗って10年以上たつのになぁ」
苦笑を浮かべた梅田が久保田の背中に回り、土を払った。
「1度貼られたレッテルは、簡単には消えない。信用を築くのと同じだ。時間がかかるんだ」
猫沢医師が静かに説明し、老人が枝垂桜を見上げた。
「見ろ。この桜は、息子が5歳の時にワシが植えた。腰ほどまでの苗木で、最初に咲いた花は僅かに3輪だった。それから約40年……、やっとこれだけの枝ぶりになった。威風堂々、誰に見せても恥ずかしくない桜だ。それに比べたら10年など……」
「親父さん……」
声を震わせた男たちが枝垂桜を見上げる。
「もう10年じゃない。まだ10年だ。辛いこともあるだろうが、耐えろ」
猫沢の言葉は美智にも刺さった。
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