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プルル……、短くスマホが震える。
「来た」
スマホの画面に希美の顔がアップで映った。美智はトイレを飛び出し、スマホに映る希美の様子を確認しながら事務室に向かう。予想が当たっていたのに、嬉しくはなかった。むしろ後ろめたい気持ちだ。
事務室のドアをそっと開けると、美智の席にいる希美と視線が合った。
「何をしているの?」
詰問する声が震えている。
「私は何も……」
美智は走り、パソコンから離れようとする希美の左手を捕った。その手には、しっかりとUSBメモリが握られていた。
「このUSBはどういうこと?」
声の震えが治まった。
「私は何も……」
希美は壊れた機械のように同じことを繰り返した。
「キーロガーウイルスでしょ?」
核心を突くと、希美は観念して力を緩めた。
「データファイルのコピーを取ったのね?」
美智は、希美の手からUSBメモリを取って突き付ける。彼女は小さくうなずいた。
「どうしてこんなことを?」
「こういうことになるからです」
「え?……意味が分からないわ」
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